あなたの脳の中に、「あの人」専用の細胞がある
概念細胞(おばあさん細胞仮説)
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一言でいうと
人の脳の奥に電極を刺して調べたところ、たった1個の神経細胞が「ジェニファー・アニストン」という概念そのものに反応していた。正面の写真でも、横顔でも、髪型が違っても、名前の文字列でも、同じ細胞が発火する。脳は見た目ではなく、意味を記憶している。
論文が実際に言っていること
てんかんの手術前検査で脳に電極が入っている患者に、有名人や建物の写真を大量に見せ、1個ずつの神経細胞の反応を記録した。
内側側頭葉のニューロンは、特定の人物や場所に対してだけ、極端に選択的に発火した。しかもその反応は不変(invariant)だった。角度が変わっても、服が変わっても、白黒でも、同じ細胞が反応する。シドニー・オペラハウスに反応する細胞は、その名前を書いた文字にも反応した。
そして反応はまばら(sparse)だった。一つの概念に反応する細胞はごく少数で、一つの細胞が反応する概念もごく少数。脳は情報を全体にばら撒くのではなく、少数の細胞に、極めて抽象化された形で持っている。
だから、どう生きるか
インプットしたものを、その日のうちに一言に潰す。
脳が保存しているのは網膜に映った画素ではない。そこから何段階も抽象化された「意味」だった。裏を返せば、抽象化されなかった情報はそもそも保存の対象になっていない、ということである。
本を読んだ、論文を読んだ、動画を見た。そこで終わるなら、脳にとってはまだ「画素の状態」だ。「要するにこういうことだ」と自分の言葉に潰した瞬間に、はじめて保存できる形になる。読書メモが有効なのは、意志が強いからではない。脳の保存形式に合わせているからだ。
そして、概念の数を絞る。
反応がスパースだったという事実は、脳が「何を概念として持つか」にかなりケチだということを意味する。大量に、浅く触れただけの情報は、専用の細胞を獲得できない。同じ対象に、違う角度から、繰り返し出会ったものだけが概念になる。
AIに全部覚えさせられる時代に、それでも人間の側に残る仕事は、生データを持つことではない。世界を意味の単位に切り分けることだ。検索はAIに任せていい。切り分けだけは、自分の細胞でやるしかない。
ここからは僕の飛躍だ
この論文は「記憶の作り方」を調べたものではない。すでに知っている有名人に対して細胞がどう反応するかを見ただけで、その細胞がどうやってできたのかは扱っていない。だから「繰り返し出会えば概念になる」は、僕の解釈でしかない。
被験者はてんかん患者であり、電極の位置も医療上の都合で決まっている。健常な脳の全体像とは限らない。
それでも、脳が意味の単位で世界を持っているという事実は動かない。そこから逆算した「一言に潰せ」は、実践する価値があると思う。
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