脳と心理と、その使い方

「たとえ」がうまい人は、表面でなく構造を写している

類推と構造マッピング理論

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一言でいうと

「原子は太陽系のようなものだ」というたとえが理解を助けるのは、見た目が似ているからではない。太陽と惑星の「関係の構造」(中心のものを、より小さいものが引力で回る)が、原子核と電子の関係と、同じ形をしているからだ。良い類推は、表面の特徴でなく、関係の構造を写している。これが「構造写像(structure-mapping)」の理論だ。

論文が実際に言っていること

類推(アナロジー)がどう働くかを、明快な理論にまとめた論文だ。ジェントナーは、比較には二種類あると区別する。

一つは、属性の一致。「地球は青いボールのようだ」——色や形といった、対象そのものの特徴が似ている。もう一つは、関係の一致。「原子は太陽系のようだ」——対象どうしの特徴は全く違う(太陽は熱く、原子核は熱くない)が、要素の間の関係の構造が同じだ。

構造写像の理論によれば、良い類推とは、後者——関係の構造を、一方から他方へ写すことだ。しかも、単発の関係よりも、関係どうしが結びついた、より深い構造(体系性)を写す類推ほど、強力で、理解を助ける。

ジェントナーはさらに、良い類推の条件を挙げる。写すべきは関係であって、属性ではない。表面的な特徴(色、大きさ、見た目)は、むしろ写像から捨てる。表面が似ているだけの比較は、しばしば誤解を生む。逆に、表面はまったく違うのに、深い構造が同じものを見抜けると、新しい理解が生まれる。

つまり、類推の質は、「どれだけ似ているか」ではなく、「どの水準で似ているか」で決まる。表面の類似は、むしろ罠になりうる。

だから、どう生きるか

新しいことは、「構造の同じ既知のもの」に結びつけて理解する。

これがこの理論の実用的な芯だ。何か新しく難しいものを学ぶとき、すでに深く理解しているものの中から、関係の構造が同じものを探して、対応づける。表面が似ているかは関係ない。むしろ、分野をまたいで構造が一致するものを見つけられると、理解が一気に進む。良いたとえを自分で作れることは、深く理解している証拠でもある。意味を深く処理することの、具体的な方法の一つだ。

「表面が似ているだけ」の類推に、だまされない。

一方で、この理論は警告もくれる。表面的な特徴が似ているだけの比較は、しばしば的外れだ。「AとBは、どちらも◯◯だから、同じように扱える」という論法は、その◯◯が表面の属性なら、危うい。過去の似た事例に飛びつくとき、似ているのは表面か、それとも問題の構造か、を見分ける。表面の類似は、遠い連想を結ぶ創造性とは逆に、安易な誤りを招く。

AIに、構造レベルの類推を求める。

いまの文脈では、こう使える。AIは、たとえや類推を大量に生成できる。だが、その多くは表面的な類似にとどまることがある。役に立つのは、「この問題と、関係の構造が同じ、別分野の問題は何か」と、構造レベルの類推を求めることだ。そして返ってきた類推が、表面の飾りか、本当に構造を写しているかを、自分で見極める。良い類推かどうかの判断は、その分野を理解している人にしかできない。

ここからは僕の飛躍だ

これは1983年の理論的な枠組みで、認知科学における類推研究の土台になった。だが、人間が実際にどう類推を思いつき、使うかは、この理論だけでは説明しきれず、その後も研究が続いている。特に、良い構造的類推を「思いつく」過程は、写像の理論とは別の難しさがある。

「AIに構造レベルの類推を求めよ」は、この理論から僕が引いた実践で、この論文が述べていることではない。

それでも、良い類推が表面の属性でなく関係の構造を写す、という中核は、学びと思考の実践に効く。新しいものを構造の同じ既知のものに結びつけ、表面だけの類似にだまされないこと。それがこの一本の使いどころだと思う。

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